最近のボスは少しピリピリしすぎている。まあ、無理もないと言えばそうなんだろうが。


「いいかげん泣き止めぇ。オレが話くらい聞いてやるぜぇ」

「・・・うん、ごめんね スクアーロ」


ついさっき、オレはに用があって部屋へ訪れた。オレが入ってきたことにかなり驚いてはいたが(一応ノックはしたが返事がなかったから勝手に入った)、オレが来たからといって泣き止むことはなかった。
相当感情が高ぶっているみたいだ。オレははっきり言ってが好きだったから泣いているを放ってどこかへ行けるはずもなく、元々の用なんて放って付き合ってやっていた。
こいつの泣く原因なんて数が知れているからだいたい検討はついていたが一応訊いてみることにした。


「なんで泣いてんだよ、

「・・ボスがね、最近冷たくなっちゃった。もう部屋にも入れてもらえないの。私、ボスに少し優しくしてもらっただけで自分が特別なんだって勘違いしてたみたい・・バカだよね」

「・・・」


は真っ赤になった瞳にかなしさを浮べ、淋しそうに笑った。ボスがに冷たく当るのは、を嫌っているせいじゃない。ただ機嫌が悪いだけだった。
ジャッポーネにいるボス候補のガキの存在が気に入らないらしく最近はピリピリしていたんだ。家光や9代目がジャッポーネのガキを支持しているのもボスの癇に障るようだ。
このことをに話してやればきっと喜ぶだろう。だが、これはオレにとってのチャンスだ。ここでがボスを諦めれば、オレにだって希望はあるはずだ。


「スク、アーロ・・・?」


オレはを出来る限り優しく抱きしめた。絶対に壊してしまわないように。は温かくてやわらかい、いい香りもした。だが細い体は頼りなく、壊れてしまわないか不安だった。オレが少し力を込めただけでも折れてしまいそうだと思った。
ずっと、こうしてに触れたかった。

「あの、どうしたの・・?」

「好きだ」

「え・・」

「ボスなんかより、おまえを大事に出来る。オレならを泣かせたりしないぜぇ」

「・・・」


思った通りの反応だった。オレはの事を想いつづけていたが、はその気持ちに気付くことは一度だって無かったし、ボスに夢中だったからそれどころじゃなかったはずだ。の目には、昔から、ボスしか映っていなかった。
を腕から開放すると、戸惑ったような顔でオレを見つめた。・・オレは、を困らせるべきじゃねえよなぁ。


「・・今のはジョウダンだ、忘れろぉ」

「えっ、」

「それとなぁ、ボスはおまえの事嫌ってないぜぇ。ただ仕事でピリピリしてるだけだから心配するな、間違いねえぜぇ」


笑って、の頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でてやると、さっきまでの表情は消えて嬉しそうに目を細めて笑った。そうだ、おまえはそうやって笑ってるほうがいい。涙や困惑顔は似合わない。
そしてその表情のまま、「ありがとう」と言った。こいつの全てはボスのものだが、今の笑顔だけは確実にオレだけに向けられたものだった。せっかくのチャンスも逃し、いいことなんて一つも無かったように思えたが、の幸せそうな笑顔が見られただけで、よかった。

title
JACKMARY