「ねえー」
「・・・」
「今は忙しいんだ。
後にしてくれないか」
今日その言葉を聞くのは3回目。
いったい何時間あたしをほったらかすつもりなの?
「いやよ」
「さんもケーキでも食べて大人しくしておいてください」
・・・
はコンピューターに向かい合っている二人の間に立ち、
二人を繋ぐ手錠の鎖をつかんだ。
ジャラ・・と音が鳴ったが、二人とも気付いていないらしい。
はそのまま鎖を思いっきり引っ張った。
すると月と竜崎は突然のことにバランスを崩してガシャンという音と共に床に落ちた。
「・・っ何するんだ!」
「・・痛いですよさん」
ざまーみろ、いい気味。
「だって構ってくれないから」
月も竜崎も腰をさすりながら立ち上がる。
ここの床は結構固いから、たぶん相当痛かったと思う。
ほんといい気味。
「だから、今は忙しいって言ってるだろ!?」
「さん、一回は一回です。
目を瞑ってください」
「・・なによ」
・・・とりあえず竜崎の言う通りに目を瞑った。
すると、パチンとおでこを弾かれた。
それも結構な力で。
「・・痛・・」
あまりの痛さに目を開けて、額に手を添えて軽く擦る。
「一回は一回です。
さん、あまり邪魔ばかりしていると、
ミサさんの様に別の部屋へ連れて行きますよ」
ああもう、そんな事よりもこの痛みをどうにかして。
じんじんする。
これ赤くなってるんじゃないの?
「ライト・・痛いよ」
「が悪いんだろ」
「いじわる」
なんか悲しくなってきた。
あんた達の所為だからね。
結局は何をしても同じじゃない。
大人しく待っていても、気を引こうとしても、結局は同じ。
相手にされない。馬鹿みたい。
「・・、泣くな。
・・・まだ痛むのか?」
「・・・」
あたしだって何がここまで、涙が出るほど悲しいのか分からない。
情けない。
「・・さん、もう一度目を瞑ってください」
またデコピン?
いや、もうヤダ。
「いやよ・・」
「いいから、瞑ってください」
そう言った竜崎はあたしの目に手を当てて、そっと瞑らせた。
さっきと同じ痛みが襲ってくると思っていたので、
体を硬くして構えていたが、デコピンされた場所にやわらかいものが触れた。
何かと思いそっと目を開けると、目の前には竜崎の顔があって、
おでこに触れたのは竜崎の唇だと悟った。
「えっ・・・」
状況を少しずつ理解していくに連れてだんだんと顔が赤くなるのが分かった。
「竜崎!僕のに何をするんだ!」
「月くんが構ってあげないので私が構ってあげました」
「え・・ちょっと二人とも」
「は僕のものだ」
月はそう言ってあたしを抱き寄せ、竜崎を睨みつけた。
・・さっきまでは全く相手にしてくれなかったのに。
「月くんにはミサさんがいるじゃないですか。
さんは私のものです」
「ミサも大切だが今はへの気持ちの方が上だ」
なんか二人とも妙に熱くなっちゃってる・・
これってあたしの所為かな。
「あっあの!」
思い切って声を上げると二人同時にあたしを見た。
「えーと・・あたしの所為で喧嘩してるの?」
「いえ、月くんが悪いので気にしないで下さい」
「いや、竜崎が悪いんだ。
の所為でも僕の所為でもないよ」
「・・うん」
さっきまでの不機嫌なキモチはどこかに飛んでいってしまったみたい。
今のあたしは、二人が事件から少し離れてあたしの事を考えていてくれることで、
自分が特別な人のような気分に浸った。今だけは自惚れていることを許してください。
*サラダさんへ*