シュッ   わたしの皮が切れて肉が裂けた


ぷつぷつと真紅の血が湧いてきて、あふれて重力に従って流れ落ちわたしのお気に入りのスカートにシミを作った。
最低。こんなことになるんなら着てこなければよかった。


「いたい・・なにすんのっ」


ベルがわたしの手首をご自慢のナイフで切った。それも結構深く。痕が残ったらどうしてくれるんだろう。
それに、このナイフはベルがたくさん人を殺してきたナイフだ。その刃でたくさんの皮を切って肉を裂いた。
ちゃんときれいに手入れてるのか心配だ。だって唯でさえ気持ち悪いのに洗ったり拭いたりしてなかったら最悪だ。
運が悪かったじゃ済まされない。


「なあ、自分の血ってコーフンしね?」

「・・しないよ。気分悪くなるだけ、吐きそうだよ」


なにに考えてるのこいつ。自分の血を見て興奮するのなんてあんたくらいよ。本当、狂ってるわ。(この仕事事態尋常な精神ではできないけれど)
だけど、わたしも相当狂ってるわね。だってこんなにベルが好きなんだもの。こんなクレイジーでサディスティックな王子なのに。
でもわたしは血に興奮なんてしないし、殺すことに快感を覚えたことも無い。ベルよりはマシなんじゃないかな。たぶん。一緒にしないでほしいわ。


「おまえの血きれいだよ。もっと見たい」

「・・ふざけないで、放してよ!」

「やだ。おまえはオレのこと大っ嫌いだろーけど、オレは気に入ってるし。
いい遊び道具になりそうじゃん?」


ベルはわたしの腕を掴んで放してはくれなかった。ベルのこと、好きだけど痛いのはきらいよ。それにわたしはおもちゃじゃないもの。
ベルはわたしのこと勘違いしてるわ、たくさん。だってわたしはこんなにあなたが好きなのに。大嫌いだと思ってる。
伝えたくても、こんな気持ちはずかしくて恐くてとてもじゃないけど口に出来なかった。(伝えたところでなにかが変わるわけでもないだろうけど)
だってベルは所詮遊び道具としてしかわたしを見ていないんだもの。どうしようもないくらいに悲しかったけれど、今その素振りを見せるわけにはいかなかった。
泣き顔なんか見せたら嫌われるかもしれないから。それがとてつもなく不安で恐い。




右頬にはベルの左手、左頬にはナイフ。ベルはにやにやとしながらわたしの頬にナイフをぺたぺたとくっつけた。
こわい・・でもまだこんなに好き。とうとう頭がおかしくなったのかな。


「絶望してなんも言えなくなった?さっきまでの勢いはどこ行ったんだよ」


ベルが軽くナイフを引くと、わたしの左頬はあっさりと裂けた。いたい。
頬を伝う血の温かい感覚がひどく気持ち悪かった。本当に吐きそうだ。今日は少しショックが多すぎた。
ごめん、もう耐え切れない。


「なにおまえ、恐くて泣いちゃったワケ? うしし。
泣き顔もいいんじゃん、


こんなに、最低でひどい男なのにどうしてわたしは好きになってしまったんだろう。
ベルなんか好きになりたくなかった。好きになってさえいなければ、こんなに胸が張り裂けてしまいそうなほどの想いも知らずにすんだのに。
どうしてすきになってしまったんだろう。今更の後悔だと分かってはいるけれど。


「すきにして、いいよ」


もうどうでもよかったんだ、わたしなんて。気が済むまで切り裂いて切り裂いて、最後には殺してしまってもいいよ。
わたしはベルに嫌われたくないもの。痛いのも忘れるほどすきだもの。





かみさまおろかなわたしをわらってよ。